■唐突だが 奈々子

■唐突だが 奈々子

お父さんはお前に 多くを期待しないだろう。

ひとが ほかからの期待に応えようとして
どんなに 自分を駄目にしてしまうか。
お父さんははっきり 知ってしまったから。

お父さんが お前にあげたいものは
健康と 自分を愛する心だ。

ひとが ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。

自分を愛することをやめるとき
ひとは 他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。

…………………………………

詩人 吉野 弘さんの
「奈々子に」という詩の一部です。

母の本棚にあった詩集は、萩原朔太郎、リルケ、そして,吉野弘。

有名な「祝婚歌」は、ご存知の方が多いかと思います。

結婚式に、祝辞に良く引用されていますね。

二人が睦まじくいるためには、、」に,こんな風が良いと,吉野弘は提案しています。

たとえば

愚かでいる方がいい
立派すぎない方がいい
完璧を目指さない方がいい
2人のどちらかが
ふざけている方がいい
ずっこけている方がいい
避難することがあっても
避難できる資格が
自分にあったかと、疑わしくなる方がいい

そして、

⚫︎正しいことを言う時は
  少し控えめにする方    
   がいい

⚫︎正しいことを言う時は
  相手を傷つけやすい
   物だと,気づいて
    いる方がいい

と続きます。
詩の一部は、どこかで聞いたような気がしますね。


吉野さんが亡くなり、終戦から間もなく,書いた物が,遺品の中から見つかりました。

人間は、その不完全を許容しつつ、愛し合うことです。

不完全であるが故に退け合うのではなく、人間同士が助け合うのです。

他人の行為を軽々しく批判せぬことです。

自分の好悪の感情で、人を批判せぬことです。

善悪のいずれか一方に、その人を押し込めないことです。

…………………………………

全ての人が、こんなふうに思うことができたなら、競争や戦争は無くなります。
知ってはいるのに、心の葛藤は,日々うまれてきます。

両親が亡くなり、
ふと,残された母の読んでいた詩集を見返すと、

いつも酔っ払って
おちゃらけていた
父からのメッセージではないかと、思う64歳の娘の私です。

私は私を
  愛しています💝